市谷亀岡八幡宮の几号水準点(水鉢台座)

  • 水鉢の下の台座の左側面に水準点が刻まれている
  • 台座左側面に刻まれた「不」の字に似た記号

画像数:2枚

所在地 新宿区市谷八幡町15 市谷亀岡八幡宮     
ふりがな いちがやかめがおかはちまんぐうのきごうすいじゅんてん(みずばちだいざ)
点数 1基
種別 新宿区登録有形文化財 歴史資料
素材・仕上げ等 石造
年代 明治8年(1875)頃
指定・登録年月日 平成29年(2017)3月29日
所有者 市谷亀岡八幡宮
アクセス JR総武線、東京メトロ有楽町線・南北線、都営新宿線「市ケ谷」駅から徒歩2分
概要  几号水準点とは明治初期に用いられたイギリス式の水準点で、几号高低標、高低几号とも呼ばれた。市谷亀岡八幡宮の几号水準点は、参道右脇に設置されている水鉢の台座に刻印されている。刻印された年代は、内務省地理寮による関八州大三角測量が開始された明治8年(1875)頃と推定される。社務所の前には、宝暦7年(1757)に越前屋吉兵衛によって奉納された水鉢があり、材質や大きさから当台座は本来こちらとセットであったと考えられる。明治初期には、台座に几号水準点が刻印され、後に水鉢のみ昭和26年(1951)に八幡講により奉納された現在の水鉢と置き換えられた。『江戸名所図会』には、現在と同じ位置に水屋が描かれており、明治20年(1887)の「東京実測図」には、現在とほぼ変わらない位置に記号と標高(水準点94.8尺[約28.7m])が記されている。以上のことから当台座は19世紀前半から現在の場所に位置しており、したがって几号水準点も明治初期から移動していないことが確認できる。
 明治初期にイギリスの技術を導入した内務省地理寮において近代的な測量が開始され、東京を中心に高低測量のため「不」の字に似た記号が刻まれた几号高低標が設置された。これらは東京の下水道整備などの都市基盤の整備にも活用されたと思われる。水準点は全国に340ヶ所設置され、現存するものは154ヶ所である。新宿区内では3ヶ所が現存しているが、設置当初と位置が変わっているものもあり、移動のない几号水準点は希少である。市谷亀岡八幡宮の几号水準点は、不朽物として神社境内の水鉢台座の側面に記号を刻んだ水準点である。設置当初から移動もな、保存状態も良好である。近代土木史上、貴重な文化財である。